私は中国のいくつかの会社でCTO、チーフR&D、チーフエンジニアといったポストで仕事をしてきました。 肩書に違いはありますが、基本的には技術方面の総責任者です。 日本の会社から出張で中国で働くという人は多いと思いますが、私が働いた会社は全員中国人です。
今日は中国におけるビジネス環境や中国人の仕事に対する態度などをエンジニアの視点から話をします。 大まかな話題としては:
- 深センの給与水準とITバブル
- ITに資金が集まる背景
- 中国人の仕事に対する態度
この辺りになります。
CTO、チーフR&Dだとか偉そうに言ってますが、実際のところ中小企業やスタートアップなので大したことはありません。
中国人というと信用できないとか真面目に仕事をしないとかいうイメージを持つかもしれませんが、それは誤解です。 まず、お金が掛かっていたら中国人は基本的にみんな必死に働きます。 中国では結婚でも愛情だけでなくお金を見ます。日本とは常識が違います。 外国人との間で関係がうまくいかないというのは、相手の常識だとかモチベーションを理解していないだけです。 実際のところIT業界だと中国でも残業は多いですし、中国人は日本人と比べても遜色ないほど勤勉です。
【深センの給与水準とITバブル】
深センの現在の給与水準をざっくり話すと、月給で:
- 飲食店 > 5万円
- 事務職等 > 10万円
- IT系のエンジニア > 20万円
- AI・機械学習エンジニア > 30万円~100万円
深センではエンジニア、特にAI・機械学習関係の給与水準は他に比べて非常に高いです。 TikTokやWechat等、動画サービスやSNSでもプログラミングスクール、特にPythonが毎日のように宣伝されています。 ただ、この辺りはバブル的な要因も多々あります。実際大半の機械学習系の人は希望給与と能力が釣り合っていません。
私も機械学習関係の面接を何十人かしてきたので、 またの機会に採用の際に具体的にどのような点やスキルを重要視しているかということについて話をします。
【ITに資金が集まる背景】
中国でIT関係に大量の資金が集まる背景にはインフレがあります。 毎年物価が4,5%上昇するので、お金をただ持っていると一年で5%目減りすることになります。 中国人は文化的に不動産投資が好きなのですが、これもすでに価格が上がるところまで上がってしまった感があります。 外国に資金を持ち出すというのも政府が制限しています。 そのため、行き場のない資金がAIやブロックチェーンといった新しい技術に流入します。 ブロックチェーンなどではおびただしい数の仮想通貨が出現して消えていきました。
もう一つは政府の資金です。 B2B、B2Cという言葉はよく聞きますが、今の中国ではB2G(Government,政府)が重要です。 例えば地下鉄改札での顔認識技術の導入、学校教育でのVR導入等政府自体が顧客となる場合もありますし、 政府にビジネスプランを提出して補助金をもらう場合もあります。
こういう状況ですので、政府のお金を得ることだけに注力する会社も少なからずあります。 私はそういうやり方が好きではありませんし、多くの中国人もこのようなやり方には否定的です。 中国人と一括りにしても、人によって考え方は違います。
【中国人の仕事に対する態度】
私の場合はエンジニアと触れ合う事が多いのですが、エンジニアにはお金よりも純粋に技術が好きという人も多いです。 中国人というとずる賢いというイメージも強いですが、エンジニアの多くはどちらかというと騙される側の人間です。 中国には他人を利用したり騙したりする人も確かにいます。 逆に言えば、騙される人がいるからこそ騙す人がいるわけです。 騙す人しかいないというのは論理的にありえません。
ただ、商務をする人間の言うことは基本的に信用しない方がよいと思います。 そもそもそういう方は自分の利益を最優先に考えているわけですし、 中国人は他人からよく見られたいという気持ちが強いので、よく話を誇張します。
仕事上の付き合いでは、私が外国人にもかかわらず、多くの人が私を慕ってくれます。 これはまず第一に私の能力が誰よりも高いから。 ニュースなどではよく反日が報道されていますが、実際のところ良い意味で特別扱いしてくれます。 私は仕事上ではかなり厳しいことも言いますし、何度でも改善を要求します。 それでもほとんどの部下は私が言っていることが正しいと信じて従ってくれます。
私の周りには勤勉な人間が多いです。 IT業界というのは中国では最も残業が有名な業界です。それでも仕事の満足度は比較的高いです。 まず、成功している会社というのは社員が自分から努力したくなるような環境を作っています。 また前半に述べたように、IT企業というのは中国では収入が高いため憧れの職業という側面があります。 少なくとも技術関係の人間は真面目で誠実だと思います。 IT業界というのは、必死に勉強して技術を高めていかないといけない世界なので、 楽して儲けたいとかいう真面目でない人には技術者をするのは向いていないわけです。 他にも学生時代に知り合った京都大学の中国留学生の多くは日本語、英語、中国語の三か国語はデフォルトで話せます。 そういった点では私の交友関係にはバイアスが掛かっているわけですが、 普通に中国の街中で出会う人でも日本のネットやニュースで度々目にするような極端な例は少ないです。
【まとめ】
今回のまとめとしては:
- 中国ではITエンジニアは人気のある職業
- IT業界には政府や投資の資金が大量に流れこんでいる
- 中国人は基本的に勤勉で、大部分は日本に友好的。誠実な人間も多い
今日はこの辺りで終わりにします。 よろしければチャンネル登録お願いします。 それではまた。